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一条の闇 2

つー↑づー↓きー↑

大丈夫な方のみ、レッツロックベイビィ!









































































































































































































一条の闇 2





「い゛やぁぁぁ……もうい゛や゛ぁぁぁぁぁ……だずげでぇ」

 無事だった瞳からは透明な涙を。くり抜かれた眼窩からは真っ赤な血液を。
 それぞれを零しながら、ポエットは認めたくない現実から逃れようとしていた。
 と。突然体が持ち上げられ、手首にかかっていた自重が消え去った。
 それと同時に、手首を拘束していた鎖が外される気配がする。

「………え……あ゛………アッシュさ……」
「ああ…別に、逃がすわけじゃないッスよ。横になってもらった方がやりやすいんス」

 もしかしたら解放してくれるのだろうか…。そんな淡い期待を胸に、己を抱くアッシュを見上げるポエット。だが、彼女の期待はあっさりと裏切られた。
 背筋が凍りそうに成る程冷たく、そして優しげな笑みを浮かべたアッシュが、その笑みを崩さぬままにポエットの身体を台の上に横たえる。
ステンレス製らしいその台の冷たさに、ポエットの意識が引き戻された。
 それはそれは嬉そうに笑ったアッシュが、手にした肉切り包丁の切っ先をポエットの真っ白な腹に突き刺した。

「いやー、獲物を丸のまんま捌くのなんて久しぶりッスねぇ」
「ぎひぃぃっっ!い゛や゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 今まで経験してきたどの痛みよりも強烈なそれが、ポエットの脳髄に到達した。
 身を捩り、血泡を吹きながら悶えるポエットを気にする様子もなく、アッシュは鳩尾に突き刺さった包丁を下腹部まで一気に引き下ろす。ブヂブヂという肉が切れる感触と共に、今までとは比較にならないほどの鮮血が傷口から溢れ出してきた。
 常人ならば、とっくに死に至るほどの激痛と出血だが、悲しいかなポエットは天使なのだ。肉体強度はともかく、精神力も、体力も、生命力も……全て人間とは比較にならない程強化された存在なのである。
 尤も、今の彼女にとって、それは不幸以外の何物でもなかったが……。
 ベリベリと傷口を押し広げ腹膜を破りながら、アッシュがうぞうぞと蠢く露出した臓物の中に腕を突っ込んだ。ポエットが悲鳴を上げるたび、その腹圧とアッシュの腕の動きにより、彼女の内臓は体外へと飛び出て行く。
 不明瞭な悲鳴を断続的に上げ続けながら、ポエットは飛び出た内臓を体内に押し戻そうと、必死で赤黒いそれをかき集める。
 だが、そんな彼女の腕を掴むものがいた。姿は見えないが、その気配だけで誰かがわかる…。

「スマ…悪いッスけど、そのまんま抑えてて貰えるッスか?」
「いいヨ~~~~~。そのかわり、後でギャンZカレー買ってねン?」

 自身の頬についた血を拭いながら、アッシュが何もない空間に話しかける。
そんなアッシュの言葉に反応したのか、すぐさまその空間に色がつき、青髪の青年―スマイル―が姿を現した。
 彼は、ポエットの腕を強制的に万歳の格好になるよう押さえつけながら、無邪気な笑みを浮かべている。どうやらポエットに対するこの行為も、彼にとっては遊び―もしくはそれに順ずるものであるらしい。

「んなっ!ギャンZカレーはこの前、箱ごと大人買いしたばっかじゃねぇッスか!!」
「えぇ~~…アレはもう食べちゃったモン♪だからぁ~~…ねぇ、いいデショ~~~??」
「ぎゃひっっ!ぐぎゃあぁっっっっっ!!!!いぎゃぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!」
「…しょうがねぇッスねぇ……ポエットさん捌いちまったら買出し行ってきますから…」
「……………………ギャンZカレーも、買ってくれル…?」
「…ったく…今回だけッスからね!」

 
 『いったいどんなペースで食ったんスか!?』等とぼやきながら、アッシュは断面から黄色い脂肪の層が覗くポエットの傷口をさらに押し広げた。
 その度に、ポエットの口からは悲鳴と血の混じった唾液が吐き出され、周囲を汚していく。
 これ見よがしにため息をついて包丁を脇に置くと、アッシュはその血まみれの手でスマイルの頭を軽く撫でる。アッシュの言葉に蒼穹の髪を所々赤く染めながらも、スマイルが嬉しそうな笑みを浮かべた。
いかにもあどけなく微笑ましい光景だが、彼等の直ぐそばではポエットの悲痛な絶叫が響き続けている。

「いぎああああああぁっ!!ぐぎゃっ、ぎゃぎゃあッ!!!」
「うわぁ…キレーな色してるネェ、ポエットちゃんのお腹の中~~~~♪」
「酒もタバコもやってないからじゃねぇッスかねぇ…って、コラ!レバー潰すんじゃねぇッス!」
 薄い膜同士で癒着しているポエットの腸を、アッシュは指とナイフを動かしながら剥がしていく。
 その隣で、無邪気に笑いながらポエットの肝臓をつついているのはスマイルだ。その姿は、玩具で遊ぶ子供と何ら変わりがない。だが、その分、意識は遊びに持って行かれたのだろう。途端に自由になった腕をばたつかせて暴れるポエットの身体を押さえ込みながら、抗議の声を上げるアッシュ。
 そんなアッシュを恨みがましそうな目で見ながら、スマイルは渋々といった様子でポエットの腕を押さえ直す。そんなスマイルの様子に苦笑を漏らしながら、アッシュは内臓を引きずり出す手を止め、ポエットの血を吸って重たくなった前髪をかき上げた。
 その隙間から見える瞳は、血の色を重ねて作ったような禍々しい暗紅色をしている。

「それにしても、流石に料理中は前髪が邪魔ッスねぇ……」
「だろうな……そんなお前に、ヘアバンドよりも使いやすい素晴らしいアイテムをやろう」
「本当ッスか!?」

 ポエットの血と脂肪にまみれて切れ味の鈍ったナイフを、床に散らばる彼女の服の残骸で拭うアッシュがため息をついた。
 成る程。彼の新緑を思わせる緑色の髪の毛はべっとりと血に汚れ、所々で赤い雫を滴らせている。
 そんなアッシュの様子に気がついたのだろう。いつの間にか傍らのソファーで古書を読みふけっていたユーリが顔を上げた。
 ごそごそとポケットを漁るユーリに、アッシュが耳を立たせて顔を上げる。もしも彼に尻尾がついていたら、きっと千切れんばかりに振られているだろう。

「うむ、コレだ。心置きなく使うが良い!」
「…………っつうかコレって……」
「ピンクの花ピン…?」

 傲岸不遜な上に自信満々な態度でユーリがアッシュに押し付けたもの。
 それは、ビーズで出来たピンクの花があしらわれた可愛らしい花ピンであった。おそらく、収録の合間に誰かに押し付けられたのだろう。

「あはー☆可愛いジャン~♪ボクがつけてあげるヨ~~~~~~♪」
「んぎゃー!やめるッスよスマ!こんなん男がつけるモンじゃねぇッス!」
「何ぃ!?アッシュ!貴様、私の厚意を踏み躙るつもりか!!!」

 それはもう楽しそうな笑みを浮かべ、花ピンを携えてアッシュににじり寄るスマイル。
 前髪をピンで止めようと腕を伸ばすスマイルを必死の形相で押し留めようとするアッシュ。
 アッシュの態度が気に食わなかったらしく、仁王像も真っ青な憤怒の形相を浮かべるユーリ。
 何だかんだで楽しそうにじゃれあう妖怪バンドの3人。そんな彼らの後ろでは、虚ろな目をしたポエットが解剖された蛙のように、内臓をはみ出させて痙攣している。
 

「ヒヒヒッ♪似合ってるジャン、それ~~~☆」
「ふむ…貰い物のピンだが、これほど似合うとは思わなかったぞ、アッシュ」
「…………うっうっ…………オレ、もうお婿に行けねぇッス…………」

 数分後。
 ユーリ城の地下室に出現したモノは、結局花ピンをつけられてしまったアッシュと、それを笑顔で眺めるスマイルとユーリ。顔を覆い、よよよ…と泣き崩れるアッシュの肩にスマイルがそっと手を置いた。
 ニッコリと笑ったスマイルの言葉を真顔で否定し、据わった瞳で彼を睨みつけるアッシュ。だが、そんなアッシュに怯むことなく、スマイルはいつもと同じ、底の見えない笑みを浮かべている。のほほんとしたスマイルの笑みを眺めながら、大きなため息を一つつき、アッシュは再び包丁を手に取った。
 前髪がピンで止められた分、視界はよりクリアになっている様だ。
 ビクビクと身体を痙攣させてのた打ち回るポエットの傷口を押さえ、アッシュが腹圧で飛び出している腸を無造作に掴む。

「あー…………とりあえず腸から引きずり出していった方が良さそうッスね」
「ぐぎゃっっ!ぎゃっ!!ぎひゃああああああああああああ!!!!!」
「んねぇ、アッス君。その腸って何に使うノン?」
「そうッスねぇ……無難な所では煮込みかソーセージって所ッスかねぇ」

 何の前触れも溜めもなく、アッシュが軽く腸を握った腕を払った。
 たったそれだけの動きで、切り裂かれたポエットの腹からはズルズルと腸が引きずり出されてくる。
 生まれて初めて感じる内臓を引きずり出される激痛に、ポエットが気違いじみた悲鳴を上げてのた打ち回る。だが、彼女が身体を捩らせるたび、アッシュの手によって端を固定された腸が彼女の腹腔から引きずり出されるだけである。
 ポエットを乗せた金属台に上体を乗せ、笑顔のスマイルがアッシュの顔を覗き込む。スマイルの疑問に答えながら、まるで豚を屠殺しているかのような感慨のなさで、アッシュは腸を引き出し続けた。
 内膜が癒着しているのか、時折傷口に詰まる腸をナイフで丁寧に切り分けて、アッシュは大きく息をつく。

「あー…人力で引き出すのも時間がかかるッスねぇ……道具か何かがあれば楽なんスけど……」
「…………何だ、それなら早く言え。この部屋のどこかにローラー式のウィンチがあったはずだぞ?」

 アッシュのぼやきに、意識を古書に戻していたユーリが顔を上げる。
 ‘探してこい、スマイル’と、ソファーに腰掛けながら鷹揚に命令する彼自身は、どうやら動く気はないのだろう。
 鬼より怖い城主様の命令に、スマイルが渋々といった表情で部屋の隅に転がるガラクタの中に入っていく。
 そして、しばらくして…………。木製の…しかも、かなり大きなウィンチを軽々と持ち上げながら、スマイルがユーリの元に戻ってきた。
 満面の笑みを浮かべるスマイルの頭をひと撫でし、再び本に視線を戻すユーリ。
 そんなユーリの態度に不貞腐れながらも、スマイルはウィンチをアッシュの傍らに運んでいく。
 ‘印鑑かサインで~’と笑うスマイルに、ローラーを確かめるように回しながら、アッシュは深くため息をついた。

「そんじゃ、スマ。オレが合図したらローラー回すんスよ?」
「はァい♪わかってるヨー☆」
「やべ、で……い゛や゛っっ!!や゛め゛でぇぇぇぇぇ…」

 自分が持っていた腸の端を、ローラーの胴体部分に無造作に打ちつけたアッシュがスマイルを振り返った。ローラーの取っ手を握ったスマイルは、それは楽しそうに笑いながら手を挙げる。
 荒い息をつき死んだように黙っていたポエットだったが、血反吐を吐きながらも濁った声で懇願を始める。
 だが、そんなポエットの哀願に耳を貸すこともなく、アッシュの手が振り下ろされ、スマイルが笑顔でローラーを回し始めた。

「ぐぎゃっっ!ぎひぃっっ!ぎゃはあァぁぁぁぁァっっっっっ!!!!!」

 スマイルが手元のローラーを回すたび、ポエットの腸がローラーの胴体部分に巻かれて行く。
 暫くの間はアッシュの手によって引きずり出されていた部分が巻かれていただけだったが、それが巻かれてしまえば、後はもうポエットの腹腔から直接腸が引きずり出されていくばかりだ。
 腸を引きずり出される奇妙な感覚とその激痛に、大きく目を見開きビクビクと何度も身体を震わせるポエット。
 開きっぱなしの口から舌を突き出し悲痛な悲鳴を上げるが、部屋の中の男たちは誰一人として心を動かされるそぶりも見せない。
 面白い玩具で遊ぶかのように、嬉々とした様子でローラーを回すスマイル。
 傷口に手を突っ込んで腸を掻き分け、内臓同士を繋ぐ内膜を切断していくアッシュ。
 ポエットの悲鳴を聞きながら、手元のグラスに入った血の様に赤いワインを揺らすユーリ。
 血の香りに酔い、彼らの手の内にある獲物を弄ぶ、美しくも残酷な化物共(フリークス)。

「ひぎっ、ぎぎゃぁっ、ぎゃ、ぎぃっ!」

 口の端に血の混じった赤い泡を浮かべ、ポエットが半狂乱の態で身悶える。
 その間もズルズルと腸は腹腔から引きずり出され、木製のローラーへと巻き取られていく。
 およそ4mほど引きずり出した所だろうか。ふとスマイルがローラーを巻く手を止め、その場にへたり込んだ。

「んもぅ飽きたー…ポエットちゃん、さっきっから‘ギャア’ってしか言わないんだもん~」
「そりゃあ仕方ねぇッスよ……悲鳴にそんなバリエーションもないッスからねぇ…」

 つまらなさそうに頬を膨らませるスマイルに、アッシュは微かに苦笑を浮かべる。
 だが、彼自身も頃合と判断したのだろう。先ほどまで使っていた肉切り包丁で、後腹壁に固定されている十二指腸の下辺りで小腸を切断する。だらりと垂れ下がったポエットの腸の断面から、ドロリとした粥状の内容物が零れてきた。

「しまった……4~5日絶食させて、腸の中を綺麗にしておくべきだったッス…」
「私は別に床が汚れても構わんぞ。どうせ掃除はお前の仕事だ」
「アッス君頑張ってネ~~~~☆」

 強烈な臭気を放ちながら床に茶色い染みを作るソレに、眉をひそめるアッシュ。
 だが、そんな彼とは対照的に、仲魔の反応の薄いこと薄いこと…。一抹の虚しさを胸に抱えながらも、アッシュは再びポエットの腹を覗き込んだ。腹腔の大部分を占めていた腸が引きずり出されたお陰で、他の臓腑の位置が手に取るようにわかりやすくなっている。

「さぁて…次はどっから取り出しましょうかねぇ…」
「………………………レバーは捨てちゃって良いと思うヨ…」
「そんじゃ、さっさと肝臓切除しちまいますかね…明日の夕飯はレバニラっすよ、スマ」
「やだヨ、そんなのー!?酷いよアッスくーん!!!!!」

 片手にナイフを持ったまま腹腔を覗くアッシュの言葉に、スマイルがボソリと小声で呟く。どうやら、いまいちレバーが好きになれないらしい。どことなく不安そうなスマイルの言葉に、アッシュの顔にさっきの仕返しといわんばかりの笑みが浮かぶ。
 にんまりとした笑みを浮かべ、ポエットの肝臓に手を伸ばすアッシュ。彼らしからぬ笑みを浮かべるアッシュに縋り付き、涙目で必死の懇願を繰り返すスマイル。
 ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人を横目に、2冊目の本を読みふけるユーリ。
 どうやらこの3人の化物共(フリークス)には、まだまだポエットを死なせてくれる気はないらしい。
 空には、未だに赤く輝く満月が不気味な光を地上に投げかけている。真夜中の惨劇はまだ終わらない。
 死にかけの蛙のように足を大きく開いてビクビクと痙攣し続けるポエットの腹に、アッシュは再び腕を突っ込んだ。再び脳髄を振るわせるその激痛に、死んだように横たわっていたポエットが血反吐を吐きながら身を捩る。

「ぎゃあっっ!も゛…も゛う゛や゛め゛でぇェぇぇぇぇええ!!!!!」
「あー……胆嚢は捨てちまうしかないッスねぇ…」

 のた打ち回るポエットを片腕で押さえつけ、癒着している内臓を鋭い爪とナイフでぶつりぶつりと剥離させながら、アッシュはポエットの腹腔内を覗き込んだ。
 小腸と大腸を一気に引きずり出されたお陰か、ポエットの腹腔内には大きな空洞ができている。そのお陰か、今では他の臓物の位置がはっきりとわかる。胆汁の詰まった胆嚢を、破れさせぬように取り除きながら、アッシュは小さく一人ごちた。
 背後から手元を覗き込んでくるスマイルを諭しながら、アッシュは淡々と解体作業を続けていた。
 溢れ出した鮮血を足元のバケツに掬い入れ、零れ落ちた肉片を傍らのバットに入れていく。

「もういやァァぁぁぁぁあっっっっ!!うぎゃあああああああああっ!!!!」
「それにしても、半分以上内臓なくなってるってのに、ポエットさん元気ッスねぇ」
「天使って、けっこう生命力強いんだネ~~~」

 ポエットが激痛に身を捩るたびに、大きく広げられた腹の傷から残った内臓が飛び出す。
 死に向かってじたばたともがく天使の様を眺め、人狼と透明人間は楽しげに笑いあっていた。
 胃を切り取り、膵臓を捨て………。鮮血にまみれた内臓を選別しながら、アッシュが最後に手をつけたのはまだまだ未成熟な彼女の子宮であった。

「い゛や゛ぁぁっっ!や゛め゛で………取らないでぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 アッシュの意図が掴めたのか、口の端から血の泡を溢れさせて身悶えるポエットに構うことなく、脂と血にまみれた彼の手が、ぶよぶよとした子宮を引きずり出した。
 大きさとしては、彼の握り拳よりも大分小さい。
 卵管も卵巣もつけたままの子宮をポエットの腹腔から引きずり出して、ニッコリと微笑んだアッシュが目を見開くポエットの目の前にソレを突きつける。

「やっぱり、ポエットさんの子宮はちっちゃかったッスね」
「あーあ……ポエットちゃん可哀想ー。これじゃあ、赤ちゃん産めないネェ」
「ま、兎にも角にも、内臓の方はだいたいこんなもんッスかねぇ」
「あ゛…あ゛ぁぁあ゛あ゛あ゛ぁあ゛あ゛…」

 クスクスと笑う化物共(フリークス)が、ポエットの目の前で彼女の卵巣と卵管を子宮から切り落とした。
 まだまだ未成熟だったとはいえ、『女』としての証を奪われたポエットの瞳から零れた涙が、彼女の頬についた返り血と混じり、真っ赤な筋を作る。
 アッシュが作業の手を止めて一息ついた時、ポエットの大きく裂かれた傷口からは、赤黒い肉の切断面と空洞になった腹腔が見えていた。
 天使の象徴と女の象徴。
 その両方を失った精神的なショックからか、もう既に片方しかない彼女の瞳は完全に光を失っている。
 虚ろな瞳を虚空に向けて、ポエットはただただ失血と激痛に身体を大きく痙攣させながら、泣き声にも似た声をあげ続けていた。

「んー……そろそろ限界ッスかねぇ?」
「ほう…天使見習いにしてはよく持った方ではないか…」
「ポエットちゃん、けっこう凄かったんだネェ」

 血まみれの手を傍らのタオルで拭いながら、首を傾げるアッシュ。
 読んでいた本から顔を上げ、ポエットに視線を走らせるユーリ。
 ニコニコと笑いながら、ベットリと血が付着した彼女の髪を撫で梳くスマイル。
 中天に掛かっていた月が西の空に傾き始めた頃。ポエットの様子を眺めていたアッシュが呟いたのを皮切りに、化物共(フリークス)はようやく彼女を苦痛から解放する気になったらしい。
 傍らの調理台にナイフを置いたアッシュが、部屋の隅へと足を向けた。その先には、何に使うのかが一目ではわからない奇妙な形をした道具たちが置いてある。
 数あるその道具の中から彼が選んだのは、奇妙な装置がついた金属のヘッドギアだった。

「そんじゃま、もうそろそろ終わりにしましょうかね…」

 ポエットの上体を起こさせたアッシュが、その器具をポエットの頭に取り付ける。
 視線を中に彷徨わせるポエットに構うことなく、アッシュは頭頂部についたハンドルを回していった。
 ゴリゴリという耳障りな音と共に、ポエットの頭部に圧力と痛みが加わる。
 アッシュがハンドルを回し続けるうち、やがてその音も聞こえなくなっていって……。

「さて。こんだけ開ければ問題ないッスよね」
「お゛ぁ…ぉあ゛あ゛……」

 ふぅと詰めていた息を吐いたアッシュがヘッドギアを外すと、それにつられるようにポエットの頭蓋がパックリと外れた。
 彼女の金色の髪の間から、灰色の脳味噌が露出している。頭皮の傷から出血した血液と脳漿が、じわじわと滲んできているのだろう。ふるふると震える中枢神経の塊に、次第に赤みが広がっていく。
 脳が空気に晒されるという未だ嘗て味わった事のない奇妙な感覚に、限界まで口を開いて舌を突き出したポエットは、もはや呻き声を上げるだけだ。
 そんなポエットを眺めながら、アッシュが傍らの大きなスプーンを手に取った。

「そういや……ポエットさん知ってました?動物の身体ん中で、一番美味いのは脳味噌らしいッスよ」
「あ゛……お゛ぉお゛お゛お゛……」

 ゆっくりと緩慢に……。そして確実に近づいてくる死の恐怖に、ポエットは懸命に抵抗しようとする。
 だが、全てはもう遅かったようだ。

「それが本当かどうか、試させてほしいッス」

 にこやかに笑ったアッシュが、大きな銀色のスプーンをポエットの灰色の脳髄の中につき立てた。
 
「vmgェkfbンpbkdbmphgほヴぇvlmぎ!!!!!!!」

 豆腐のように柔らかなそれを抉り、掻き出し、大きなバットに取り出していく。
 冷たい金属が生暖かい脳髄を抉るたびに、ポエットの身体はガクガクと跳ねるように痙攣する。
 脳を蹂躙されても即死に至らないのは、彼女が天使たる所以であろう。だが、今の彼女にとって、その強靭すぎる生命力はまさに無用の長物だ。
 ポエットが身体を痙攣させるたび、パッカリと開いた頭の縁から脳の欠片が零れ落ちる。
 開きっぱなしになった唇からだらしなく舌をはみ出させ、ポエットは言語の意味を成さない断末魔の悲鳴を上げた。
 零れんばかりに見開かれた目はグルリと裏返り、今はもう白目を向いている。
 あらかたの脳味噌が抉り出されたというのに、鼻や耳から脳髄と脳漿が混じった血液を垂れ流しながら、ポエットはまだ生きていた。

「んじゃあ、ま……これで最後、ってことで………」

 ポエットの脳が入ったバットを冷蔵庫にしまい、アッシュが再びナイフを手に取った。血と脂で切れ味の鈍ったそれを、未だに脈動を続けるポエットの心臓にあてがって……。
 
 ようやく、ポエットに安息が訪れた。
 ……尤もそれは、【死】という名の安息であったが……………。








 
 未だ夜も明け切らぬ早朝。
 花柄エプロンに三角巾で身支度を固めたアッシュが、一人城の台所に立っていた。その手には、使い慣れた愛用の包丁と朝食の材料が握られている。
 太さ3センチはあろうかと言う赤黒いソーセージは、彼の手作りの一品だ。その表面に細かく隠し包丁を入れ、よく熱したフライパンにそれを投入すれば、肉の焼ける音と匂いが一気に厨房に満ち溢れる。
 ソーセージを焼く間に、レタスを千切り、パンを温め、食器を準備し……。そうこうしているうちに、朝寝坊気味の仲魔たちがようやく階下に降りてくる。

「ん~~~……オハヨ、アッくん~~~~……」
「…………相変わらず早いな、犬……」
「誰が犬ッスか、誰が!阿呆なこと言ってねぇで皿でも運んでください!そろそろ朝飯ッスよ!!」

 平素はDeuil的ヒエラルキーの最下層に位置するアッシュだが、食事に関連することとなれば話は別だ。
 のたのたと歩くスマイルに皿を持たせ、不機嫌度MAXな城主様にナイフやフォークを持たせて……厨房を取り仕切る主夫が、二人を食堂へと追いやった。
 そんな彼に反発することもなく、二人は大人しく食堂へと転進を始める。
 ここで逆らってアッシュの機嫌を悪くしてしまったのなら、本日の朝食にありつけないことは身を以って知っているからだ。
 こういう時だけは素直な吸血鬼(ヴァンパイア)透明人間(インビジブル)を見送って、人狼(ヴェアヴォルフ)は朝食の準備を再会した。
 よく焼けたソーセージと、半熟のスクランブルエッグ。それに付け合せのサラダをそえて、アッシュは出来上がった料理を食堂に運んでいく。

「はい、いただきます!!」

 アッシュの声に合わせて、テーブルに座った全員が一斉に手を合わせる。
 ユーリが新聞を片手にパンに手を付ければDeuilの主夫のお小言が炸裂し、スマイルが皿をひっくり返せば、その顔目がけて雑巾が飛ぶ。
 ヴィジュアル系バンドらしさの片鱗すら窺えない光景だが、これが彼らの食事時の風景なのである。

「ほう。ブルートヴルストか……中々の仕上がりだな」
「血と肉に癖があったんで、スパイス効かせてみたんス。上手くいってよかったッスよ」
「こっちのパテも美味しいヨ~~~~☆アッ君、また料理の腕上げたネェ」

 よく焼けた血のソーセージを口にした城主様が、珍しくその口元に笑みを浮かべる。
 どうやら、本日の朝食はお気に召していただけたらしい。灰色のパテを塗ったパンを齧っている透明人間にも好評のようで、安心した狼男は嬉そうに相好を崩した。

「おいアッシュ。今日の夕飯は何だ……?」
「アンタ、朝飯食ってるときに夕飯の話ッスか?今日はスマのリクエストのカレーッス。肉はもう少し熟成させたいんで……」
「やったぁ!ボク、アッス君のカレー、大好きだヨー!!」

 賑やかな朝食の時間は、あくまでも和やかに過ぎていく。
 笑いあいながら自身の血肉を貪る化物共(フリークス)を、まな板の上に残った天使の瞳が眺めていた……。

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プロフィール

みやうち

Author:みやうち
いあ!母なる森の黒山羊よ!
いあ!父なる混沌の媒介よ!
北狄の地に眠る、醜く蠢く肉の塊にして、のたうつ太い腕と、滑りにくい靴を好む短い脚、粘液を滴らせる大きな口を持つ。
それは、しわがれた低い声で、呪詛と歓喜を詠うであろう。

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