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一条の闇 1

かつて、2ちゃんねるエロパロ板のリョナスレに投稿したモノです。
誤字脱字の修正や、若干の加筆を行ってみました。
当然の如くグロ注意です。







簡易人物紹介
元ネタ:K0NÅMIの『ポップソミュージック』
ポエット:ホワイトランドと言う所に住む天使の女の子。
ユーリ:メルヘンランドに住む吸血鬼。‘Deuil’というバンドのヴォーカルを務める。
アッシュ:メルヘンランド在住の狼男。‘Deuil’の料理のできるドラマー。主夫。
スマイル:メルヘンランド住みの透明人間。担当楽器はベース。ギャンブラーZ大好き。
MZD:ポップソ世界の神様。永遠の子供、らしい。サングラスと帽子がトレードマーク?

ぶっちゃけ、Deuilの3人組が限りなく黒くなっておりますので、この3人が好きだー!と言う方はスルー推奨です。

大丈夫だよーという方のみレッツ ロック ベイビィ!!




























































































































































































一条の闇




 メルヘンランドの一角にある、広大な樹海に周囲を囲まれてそびえる白亜の城。
 そこには人ならぬ化物(フリークス)がいて、バンドを組んでいる。その音を聞いた者、全て虜となるという…………。

 だが、天使たるもの何を恐れることがある。天使たる者の心に恐れなどあるものか。
 神の書状を胸にして、天使は夜の深遠に現れ出でる。あらゆる恐怖をものともせずに。
 樫の木が満月の光に揺れる時でも   狼たちが遠吠えをする夜でも………。








 満月を背に、夜目にも鮮やかな金髪をツーテイルに結い上げたあどけない天使の少女が城のテラスへと降り立った。テラスの奥には、城のリビングが広がっている。
 大きな窓からは満月の光が差し込んでいて、照明がなくても部屋の中は十分すぎるほどに明るい。中に入ったポエットがきょろきょろと部屋の中を見回していると、闇の奥から溶け出してきたかのように、一人の青年が現れた。
 白銀の髪と深紅の瞳を持つヴァンパイアにして、この城の主・ユーリだ。

「こんばんは、ユーリさん!ポップンパーティの招待状をお届けに来ました!」
「わざわざすまないな、ポエットか…ホワイトランドからこの城まではかなりの距離だっただろう?」
「大丈夫です!これも、私達天使のお仕事ですから!」
「それでは、アッシュに冷たいものでも用意させよう。少し休んでいくといい」
 
 無邪気な笑みを浮かべ、とてとてと近づいてくる少女の頭を撫でながら、ユーリはその唇に薄い笑みを浮かべる。
 彼女から受け取ったポップンパーティへの招待状を、ユーリが胸のポケットにしまったちょうどその時、リビングと廊下を繋ぐドアが開き、光と共に長身の男が部屋に入ってきた。
 『電気もつけないで』とため息交じりに苦笑した青年が、壁際のスイッチをカチリと入れる。途端に部屋の中は光に包まれ、各々の姿をさらにはっきりと浮かび上がらせた。
 緑色の髪の合間から茶色い獣耳を揺らした青年が、ユーリとポエットに歩み寄ってくる。人狼族の青年であり、ユーリがヴォーカルを務めるバンドであるDeuilのドラマー・アッシュだ。困ったように笑う彼の手には、二人分のアイスティーが乗った銀のトレイが下げられていた。

「ここまで飛んでくんのは暑かったッスよね。コレでも飲んで、一息入れて下さい」
「わぁ…美味しそう……ありがとうございます、アッシュさん!とっても美味しそうです」
「味は保証しますよ。隠し味が、効いてるでしょうからね」
「………え…??」


 母親のように優しい笑みを浮かべながら、アッシュがポエットとユーリにグラスを手渡した。‘大丈夫’とは言っていたものの、やはり暑さのせいか喉が渇いていたのだろう。
 何も知らない無邪気な笑顔で、ポエットは喉を鳴らしながらグラスの中身を飲み干した。 頭が痛くなるほど冷やされたアイスティーは、火照った身体にスウッと染み渡っていく。
 アッシュの不可解な台詞に、ポエットが伏せていた顔を上げた途端、彼女の視界がぐらりと揺れた。
 次第に霞んでいく、ポエットの視界の向こう側……そこに見えたものは、いつもと変わらぬ優しげな笑みを浮かべるアッシュとユーリの顔であった…。





 深い、深い闇が広がっている。
 なぜだか身体が重くて……静かな空間、頬を撫でる風の冷たさだけがやけに新鮮に感じられた。鉛が詰まっているかのように重い頭の中で、‘どうして?’という言葉がグルグルと回る。何かを飲まされたのだろうか……活発化しはじめた脳髄が、現在の状況をを判断しようとめまぐるしく明滅しているかのようだ。
 芯からズキズキと痛む頭を押さえようと手を動かそうとして……ポエットは、自分の身体が全く動かないことに気がついた。
 霞みがかったような視界に映るのは、よく見慣れた二人。

「アッシュさ……ユーリさん、も……?」
「あぁ、気がついたんスか。ポエットさん」
「少々薬を入れすぎてしまったようだな」

 先ほどまでいたリビングとは、全く趣を異にする内装を背景に、二人の青年は普段どおりの笑みを浮かべている。相違点を挙げるとするならば、アッシュが花柄のエプロンを着ているという事くらいだろうか。
 いつもとは確実に何かが違う二人に違和感と幽かな恐怖を覚えつつ、縋り付くように、ポエットは掠れる声で必死に二人の名を呼ぶ。だが、彼女の期待とは裏腹に、二人にはポエットをこの状況から解放しようという気は全くないらしい。
 湧き上がる不安と恐怖に比例するかのようにポエットの意識が少しずつ回復していく。それに従って、ポエットはようやく自分が置かれている状況を理解することができた。
 両手首が細い鎖でがんじがらめに拘束され、爪先が床につくすれすれの高さで吊り上げられている。強制的に‘万歳’の格好を取らされているためだろう。引き伸ばされた腕や胴体は、今この時もギリギリと引き絞られるような痛みを訴え続けている。
 この中途半端な体勢から逃れようと、ポエットは翼を動かそうと試みるが、彼女の意志とは裏腹に、白い翼は一向に動く気配を見せなかった。それどころか、ますます身体も翼も重くなっていく気配さえ感じられるではないか。

「逃げようとしたって駄目ッスよ、ポエットさん」
「この部屋には、天使を無力化させる特殊な魔力結界を張ってあるのだからな」
「それじゃ、ボチボチ始めることにするッスかね」

 いつもの彼からは想像もできぬような低い笑い声を響かせ、アッシュが傍らの調理台のナイフを手に取った。それを目視したユーリが、ポエットの目の前にある革張りの豪奢なソファーに身を沈める。
 ごくごく軽い調子で呟いたアッシュが、何のタメもなしにナイフを持った手を横薙ぎに払った。

「……っ…カハッ…あ゛…っっ……」
「…っと……ちょっと切りすぎちまったッスかね?」

 次の瞬間、突然襲ってきた痛みと息苦しさに、ポエットの瞳が零れんばかりに見開かれる。あの一振りで、ポエットの喉がパックリと切り裂かれていた。
 脈動にあわせて吹き出だす赤く生暖かい血が、アッシュとポエットの身体をじっとりと濡らしていく。不明瞭な悲鳴を上げポエットが暴れるたび、鎖がギシギシと耳障りな金属音を響かせた。
 首から胸元を伝い、腹、太腿と滴る血液が床に大きな血溜りを作っていく。
 血に濡れ重くなった前髪を煩わしそうに払いのけながら、アッシュが傍らのワイングラスを手に取る。硬質なガラスの輝きを宿すそれを、無造作に溢れ出る血の中に差し出した。
 澄み切った空気のように透明だったそれが、ポエットの血煙と脂肪によって見る間に曇り汚されていく。グラスや床に血液が溜まっていくのに従って、ポエットの顔色はどんどん青ざめていくばかりだ。
 必死に呼吸をしようとしている様だが傷口からヒューヒューと空気と血液が漏れるばかりで、体内に酸素が取り込まれた様子は一向にない。
 ……とはいえ、流石は天使の生命力、というところだろうか。それからしばらくもしないうちにぱっくりと開いていた傷口は自然と塞がり始め、溢れる血の量も徐々に少なくなっていく。
 それでも、極上の赤ワインを思わせる赤黒い液体が、グラスの中ほどまで溜まった頃。座ったままのユーリの目の前に、ツイとグラスが差し出された。
 テイスティングでもするかのように、グラスの中から立ち上る芳香を楽しんだユーリが、徐にグラスに口をつける。
 
「……ッッッ…はっ…カハッ…!」
「………で、どんなもんッスか?」
「微妙なところだな。処女らしい華やかな味はするが……天使は天使だ。私の口には合わん」

 喉の傷が塞がったことで、ようやく呼吸ができるようになったのであろう。激しくせき込んで湿った呼吸音を漏らしながらもがくポエットを一瞥し、アッシュはユーリに向き直った。人狼(ヴェアヴォルフ)の声に頭を上げた吸血鬼(ヴァンパイア)の顔には、ごくごく薄い笑みが浮かんでいる。
 ほんの僅かにしか中身の減っていないグラスがユーリの手から滑り落ち、床に新たな血花を咲かせた。それを見たアッシュが‘血痕は落ちにくいんスよ’と、口の中でぶつくさと呟きながら眉を顰めるが、城主様がそれを気にする様子はまるでない。

「な…何で……何でこんなこと……?」
化物(オレたち)の本能ッスかねぇ?満月の夜は、破壊衝動が一番強くなる時なんスよ」
「満月の夜に、私達(フリークス)の住処に来たのが‘運の尽き’という所か?」

 可愛らしい顔を血と涙で濡らしながら、ようやく喋れるほどに回復したポエットが泣きじゃくる。傷はすっかり塞がっているものの、失われた血までが戻るわけではない。そのせいか、元々は健康的なベビーピンクだった彼女の頬は、青白いまでに白くなっている。
 いつもと全く変わらない爽やかな笑みを浮かべたアッシュが、傍らにおいてあった肉切り包丁を手に取った。親指の爪に押し当てて、切れ具合を確かめている。
 それはそれは楽しげな笑みを浮かべながら、アッシュの手がポエットの身体を撫で回す。人狼族特有の、少し高めの体温を持つその掌の感触に、ポエットは肌をあわ立たせた。
 何をされるかわからない恐怖に、我知らずポエットがカチカチと歯を鳴らす。そんな彼女の様子を楽しげに眺めながら、アッシュは包丁を握った方の手を振り下ろした。

「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」

 刃が肉に食い込む鈍い音に一瞬遅れて、ポエットの絶叫が部屋中に響き渡った。ちょうど膝の関節の辺りに、包丁の刃が半分ほど埋まっている。
 溢れる血も、間断なく上がるポエットの悲鳴も無視し、アッシュは包丁を動かしていく。刃が進んでいくごとに、真っ赤な肉が切り口から姿を現した。

「い゛や゛ぁぁぁぁぁぁっっっっ!!いだい…い゛だい゛よぉぉぉぉぉ!!!!!」
「ちょ…ポエットさん、暴れねぇでほしいッスよぉ…」

 水揚げされた魚のように跳ねるポエットの身体を押さえつけ、アッシュが太腿とふくらはぎにそれぞれ手を添える。
 そして…………。ゆっくりと、雑巾でも絞るかのように、アッシュがポエットの足を捻りだした。人狼(ヴェアヴォルフ)の怪力に、身体の耐久率は常人とほぼ変わらない天使の身体が耐えられるはずもない。見る間に肉が裂け、関節が壊されていく。
 
「ぎっっ、ぎゃっっ!!あ゛ああああああああっっっっ!!!!!」

 白目を向いたポエットの口から、断末魔にも似た悲鳴が迸った。ブチブチと筋組織が引き千切れる音、骨がひしゃげる鈍い音と共に、ポエットの左の膝下がねじ切られていく。
 その間も、ポエットの口からは悲鳴が迸り、傷口からはボタボタと血液が滴っている。 やがて、ゴキッという骨の砕ける音と、ブチッという肉の千切れる音がして、ポエットの膝から下が完全に引き千切られた。

「あ゛じ……わだじの、あじぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 不自由な身体をジタバタと動かし、狂ったようにポエットが叫ぶ。可愛らしかったその顔は、今や、汗、血、涙、涎、鼻水…顔から出る全ての液体で見る影もなく汚れている。
 引き千切られた足を見つめるポエットの前で、アッシュが、その柔らかなふくらはぎの肉に齧りついた。鋭い犬歯を肉に突きたて皮膚を噛み破り、その下の肉を食い千切る。本人としては食材の味の確認のつもりなのだろうが、生肉を咀嚼し飲み下すその姿は普段の彼からは想像もつかぬほどに荒々しい。

「…………感想はどうだ、アッシュ」
「微妙ッスねぇ。子供のせいか肉質が柔らかいのは良いんスけど、どうしても癖があるのが気になるんスよ……この分だと、内臓も期待できそうにねぇッスね…」

 今まで、黙って成り行きを見守っていたユーリが口を開いた。いったいつの間に出してきたものか、自分好みのワインを注いだグラスを片手にアッシュに笑いかけた。だが、そんな些末なことなど気にせぬ風で、齧り付いていた足を無造作に投げ捨てたアッシュが口の横についた血を拭う。
 ガックリと肩を落としたアッシュが、再び肉切り包丁を手にし、ポエットの前に立ちはだかった。

「い゛や゛ぁぁぁ……足ぃぃ…わたしのあしぃぃぃぃぃぃぃぃぃい」

 虚ろなポエットの瞳が、投げ捨てられた自身の足を追い、彷徨う。アッシュもそれに気がついたのだろう。一度は投げ捨てたはずのそれを再び手にし、ポエットの元へと近づけた。
 齧り捕られた肉の合間から白い骨が見えているソレを、アッシュはポエットの前でちらつかせる。アッシュのその言葉に、ぽろぽろと涙を零しながらポエットが必死で言葉を紡いだ。

「かえしてぇぇぇ…私の足かえしてぇぇぇ…」
「そう言われても、断面がぐちゃぐちゃッスからねぇ。もう繋げねぇッスよ、コレ」

 苦笑を浮かべたアッシュが、ポエットに見せ付けるように脛の切断面を彼女の顔に近づける。そこは、彼の言葉どおり酷いものだった。時間がたったせいか血は流れていないものの、黄色い脂肪と赤い肉の合間から、白い骨が見え隠れしている。
 目を見開いて切断された自身の膝下を見つめるポエットの目の前で、にこやかに微笑んだアッシュが、まるで鉛筆でも折るような簡単さで、その脛の中ほどから無造作に折り捨てた。
 生ゴミの様に床に投げ捨てられたそれは、狼のブーツの底で踏みにじられ、瞬く間に原型すら留めない肉塊へと姿を変える。
 
「さてと…そろそろ内臓の方にも手を付けねぇといけねぇッスね」
「ぇ……あ…や………いやぁぁぁぁ……殺さないでぇぇぇぇ……」
「大丈夫ッスよ、ポエットさん。ポエットさんは天使ッスからねー」
「お前たち天使は、頭部か心臓さえ残っていれば再生できるのだろう?死ぬという事はないさ」

 腹に包丁の切っ先を突きつけられたポエットが、半狂乱になって泣き喚く。彼女が身動きするたびに鮮血が周囲に飛び散り、鎖が耳障りな音を立てた。
 だが、必死で哀願するポエットを眺める二人は、綺麗な…しかし冷たい笑顔を浮かべたままだ。
 満面の笑みを浮かべたアッシュの包丁が、柔らかなポエットの腹の皮を破ろうとしたその時。何とも間延びした声と共に、部屋の扉が大きく開かれた。

「アレ~~~~~?みんな揃って何してるのン?」

 蒼穹の空の色を映したような青い髪と、赤い瞳が印象的な透明人間(インビジブル)。顔の半分以上を包帯で覆い隠した、Deuilのベーシスト・スマイルだ。
 足を千切られ、血まみれになったポエットの姿は、スマイルの目にも見えているはずである。それにもかかわらず、平素のポエットと接する時とまったく変わらぬ調子で、スマイルは無残な姿になったポエットに邪気のない笑顔を見せ、手を振っている。
 相も変わらず飄々とした捉え所のない調子で部屋の中へと足を進めるスマイルが、ポエットの近くまで歩み寄り、だらりと力なく垂れている彼女の羽を手袋越しに撫でさすった。

「ン~~~☆いい手触りぃ♪実は今ネ、新しいお薬作ってるンだケド、材料に天使の翼が必要なんだよネ~~~」

 何も知らない子供のような無邪気な笑顔で、スマイルがポエットの柔らかな羽根に頬擦りをする。
 だが、その笑顔の純粋さとは裏腹に、纏うオーラは魔王と行っても過言ではないほどに禍々しい。

「だからネ、ポエットちゃんの翼……ボクに頂戴?」
「いやっ!!や……いぎゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」
「んもぅ…暴れちゃだめデショ、ポエットちゃん☆女の子がはしたないヨ」
「いやっっ!!ぎゃあぁぁっっっ!!いだい!!!いだいよ゛ぉぉぉおっっっ!!!」

 両方の羽根の根元にそれぞれ右手と左手を置き、透明人間(インビジブル)がニコニコと微笑んだまま羽根の関節をあらぬ方向に捻りだした。途端に、無茶な方向に力を入れられた関節が、ミシミシと音を立てて軋みだす。
 スマイルの腕から逃れようと、自由にならない身体を芋虫のように捩り、ポエットは涙と鼻水で顔を汚しながら激しくもがく。
 邪悪そのもののオーラを纏いつつ無邪気な笑みを浮かべたスマイルが、羽根をねじる腕にさらに腕に力を込める。
 細身の彼からは想像もつかない程の力だ。そして、ゴキッでもベキッでもなく……かといってバキッでもなく…。ポエットが暴れたせいで、関節に余計な力がかかったのだろう。肉と骨の軋む音を立て、羽根の関節が完全に外された。

「ぎゃあぁぁぁああぁぁぁぁああああぁぁぁあっっっっっっ!!!!!!」

 ひときわ大きな悲鳴を上げて、ポエットが身体を仰け反らせる。大きな瞳は限界まで見開かれ、今にも眦が裂けてしまいそうなほどだ。
 彼女の翼は、今やとても使い物にならぬほどに破壊されていた。右の翼は関節が完全に破壊されたようで、翼の上下が逆になったまま、背中からだらりと垂れ下がっている。その上半分背中から引き千切れてしまったようで、根元の肉が裂け、白い骨が肉と鮮血の赤の間に見え隠れしているではないか。左の翼も右の翼ほどではないが、やはり完全に脱臼している様だ。
 
「あっれー…まだ取れてないノン?随分丈夫なんだねェ…☆」
「ぎゃあっっ!うぎゃあっっ!!!ぐげぇぇぇぇぇっっっ!!!」
「ああ、もう……何やってんスか、スマ……」

 低く低く……それでいてとても楽しげに笑いながら、スマイルが未だに背中についたままの翼をグリグリとねじ切ろうとする。
 その度に、半分白目を剥いたポエットの口からは、涎と泡と不明瞭な悲鳴があふれ出した。
 いつまでも翼がとれずに苦戦しているスマイルを見かねたのか、これ以上調理の邪魔をされたくないのか……大きくため息をつきながら、アッシュが大きな肉切り包丁を手にして近づいてきた。スマイルをポエットのそばからどかせると、入れ替わるようにポエットの翼に手をかける。
 翼の付け根に手をやれば、関節どころか骨まで粉々に砕けているらしい。ぐんにゃりとした肉の感触が狼の掌越しに感じられた。

「いやぁぁぁぁあああっっ!いだい……いだいよぉ……っっっ!!」
「スマぁ。片っぽだけでいいんスか?」
「えぇーっとねぇ…両方~~~☆」

 だらりと垂れた羽根を摘みながらスマイルに視線を向けるアッシュと、たかだかそれだけの刺激にすら激痛に身を捩らせるポエット。
 そんなポエットを見ながらそれはそれは楽しげに笑うスマイルに、アッシュは大げさにため息をついてみせると、包丁を振り上げた。
 包丁の先が背中の肉にズブリとめり込んだ瞬間、ポエットが白目を剥いて濁った悲鳴を上げる。
 ジャガイモの芽でもくり抜くように刃先で抉ってやれば、破壊されつくした関節から、いともかんたんに簡単に翼が地に落ちた。

「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「キミをこーわしたい バラバラーにしたい♪って感じぃ?」
「………バラバラじゃなくて‘粉々にしたい’ッスよ………」
「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!はねぇ…っ!はねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 にぃっと笑った透明人間に、微妙に歌詞の間違った持ち歌を歌われたアッシュが、苦笑を浮かべながらメロディを口ずさんだ。羽根がもぎ取られたポエットの背中の傷口からは、脈動に合わせて真っ赤な血が噴き出している。
 気が狂ったように暴れるポエットの身体を押さえつけ、アッシュが先ほどと同様に、反対側の翼の根元にも包丁を付き立てる。
 だが、関節が破壊されていない左側の翼は、先ほどのように簡単に落ちてはくれないようだ。
 迸る鮮血を気にした風もなく、アッシュはスマイルの言葉を否定しつつ肉切り包丁を前後にグリグリと動かす。その度に、半狂乱のポエットが血と唾液が混ざった赤い泡を吐き出しながら激しく身体を跳ねさせる。
 今や、彼女の全体重を支える手首は、鎖によって皮が破れ、肉と骨が露出している部分さえある。

「えぇ~でもサァ…今、アッス君ポエットちゃんバラバラにしてるじゃん?」
「…それとコレとは話が別ッス!!」
「ひぎゃっっ!ぎにゃあぁぁぁっっっ!!」

 ビクビクと身体を痙攣させるポエットの頭上で、透明人間と狼男はのん気に談笑しながら包丁を振るっている。
 と。
スマイルの台詞に八つ当たりでもするように、アッシュがポエットの翼の根元に、手加減なく包丁をつきたてた瞬間。

「ぐぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ!!!!!」

断末魔にも似たポエットの絶叫と共に、突き立てられていた肉切り包丁の動きが滑らかなものになった。
 どうやら、左の翼の関節が今度こそ完全に破壊されたようだ。スムーズに動くようになった包丁を握りなおし、先ほどと同様に翼を抉り取るアッシュは、手にした1対の翼を傍らの椅子に座っていたスマイルに手渡す。

「はねぇ……あだじのはねぇぇぇぇぇ……がえじでぇぇぇぇぇ……」

 自由にならない身体を芋虫のように動かし、もぎ取られた自身の羽にポエットは近づこうとする。悪夢のような現実の中、ポエットの意識を繋ぎとめているものは自身が神の使いだと言う矜持なのかもしれない。
 その象徴である白く輝く大きな翼。
 それがもぎ取られた今、彼女の理性を現実に繋ぎとめるものは何も、ない。

「コレしかねぇんすから、大事に使うんスよ!」
「わかってるって~☆あ、ポエットちゃん、ありがとネ~~~♪」
「い゛やぁぁぁ…いだいよぉ……だずげでぇ……もういだいのい゛や゛ぁぁぁぁぁ」

 血まみれの白い翼を受け取ったスマイルが、無邪気な笑みを浮かべてポエットの頬に唇を落とす。だが、ポエットは虚ろな瞳で苦痛を訴え続けるだけだ。だが、そんなポエットの反応が気に食わなかったのだろう。
 眉根を寄せたスマイルが、赤い肉がむき出しになったポエットの背中に手を伸ばし……翼があった辺りにできた傷口に、皮手袋を嵌めた手を突っ込んだのだ。

「ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
「あのさぁ…ボクちゃぁんとお礼言ったヨネ?…なのにサ‘嫌’っていうのはないんじゃないノン?」
「ひぎゃあっっ!ぎゃっっ!!ご、ごべんな゛ざい!ごべんな゛ざいぃぃぃぃぃぃぃ!」

 いかにも不貞腐れた様子で、スマイルはポエットの傷口を抉り続けている。最早、翼があった場所は皮と肉が破れ、肩甲骨が見えはじめていた。
 涙ながらに懇願するポエットの態度に、ようやく満足したのだろう。
スマイルがポエットの身体から離れ、ソファーに腰掛けるユーリの足元に座り込んだ。

「い゛や゛ぁぁぁぁぁああぁああぁ……かみさまぁ…たすけてぇ……」

 返り血と涎で汚れた顔をぐしゃぐしゃに歪ませて、掠れた声でポエットは神の名を呼び続ける。自分に招待状を持たせ、この城へと送り出したこの世界の創造主の名を。
 もしかしたら、自分の帰りが遅いことに気が付いて、この城に訪ねてきてくれるかもしれない。
 もうすぐ神がこの悪夢から自分を助けてくれるかもしれない。そんな微かな希望に縋りつくポエット。
 だが。彼女の淡い期待は裏切られることになった。
 彼女が心から信じている創造主の手によって………。

「あっちゃあ……始まっちまってたかぁ…」

 部屋の中に突然男の声が響いた。それと同時に闇の奥がぐにゃりと歪み、その中心から一つの影が姿を現す。
 ニット帽にサングラス。長い袖を引きずったぺちゃ鼻の少年。この世界の創造主。全能の神。六本木の悪魔―――。

「…MZDか……」
「お、よくわかったな、ユーリ!…つかさ、ちょっとは驚いたふりくらいしてみせろよー」
「…MZDさん……お願いッスから玄関から入ってきてほしいッス…」
「あー、MZDジャン!ひっさしぶり~~~☆」
「おう!お前等も元気そうで何よりだぜ」

 驚く様子も見せず振り返ることもせず…ユーリは手元のグラスから視線を外すことなく、声だけを神―MZD―に向ける。だが、宙に浮きながらブーブーと唇を尖らせる神様は、そんな城主殿の反応に相当御不満なようだ。
 血と脂で汚れた包丁を拭う手を止めて苦笑するアッシュと、ニコニコ笑いながら手を振るスマイルに手を振りかえすMZD。
 そのまま滑るように空中を移動し、蕩けるような笑みを浮かべて翼を抱くスマイルの横をすり抜けて、ポエットの前に降り立った。

「随分手ひどくやられたなー、ポエット」
「かみ………さ、ま………」
「ま…お前ら天使の場合、身体の一部分でも残ってりゃあオレの力で復活させてやれるし、運が悪かったと思って諦めてくれや」
「ぎゃぁああああぁぁぁぁああぁぁぁぁあっっっっ!!!!」
「あっ、こら!暴れんなって!!」

 所々に血液がこびり付いたポエットの頭を撫でながら、いかにもすまなそうな声色のMZDが頭を掻くが、彼のサングラスの奥の瞳は楽しげな色を滲ませている。
 にぃっと笑ったMZDが、ついっとポエットの瞳に手を伸ばし……。
 ポエットがそれをいぶかしむ間もなく、MZDの指が眼窩にめり込んだ。ずぶりずぶりと円を書くように、MZDは指を動かしていく。
 信じていた者からの思いもしない行為に、ポエットは悲鳴を上げてのた打ち回ることしかできない。そしてついに、ポエットの左の眼窩から、オリーブ色をした彼女の瞳が抉り出された。
 視神経が繋がったまま眼窩から垂れ下がっている瞳を、MZDは力任せに引き千切る。

「これで再生に必要な部分は確保できたし、あとはお前らの好きにしていーぞ」
「随分少ないッスけど、そんなもんでいいんスか?」
「ま、その辺はカミサマ権限…ってやつだな」
「神様って便利だネェ…ヒヒヒッ☆」

 MZDが眼球にべっとりと付着した血液をペロリと舐めながら、ぐったりと項垂れるポエットを指差す。
 指先でポエットの眼球を弄ぶMZDに、アッシュとスマイルは興味津々と言った様子で話しかけた。そんな二人の相手をするMZDの表情は、どことなく得意げだ。

「…っと、もうこんな時間か。とりあえず用は済んだし、仕事に戻んねーと影が喧しいな…んじゃ、あとは頼んだぜ~」
「まったく……忙しない男だな……」
「しょーがないんじゃナイ?ポップンパーティも近いみたいだしサァ☆」
「…まあ、曲がりなりにも‘神様’ッスからねぇ…」

 しばらく二人と話しこんだ後、来たときと同様にMZDは唐突に姿を消した。
 彼がこの部屋にいたという事を証明する痕跡は、彼が抉り取ったポエットの左の眼球だけである。
 どことなく呆れたような声色を滲ませながら、グラスを空けるユーリ。
 そんな吸血鬼(ユーリ)の膝に上体を凭れかけさせるスマイル。
 磨き終わった包丁の刃の試し切りをするアッシュ。


 ………ポエットの悪夢はまだ終わらない…………………。



【to be continued】




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プロフィール

みやうち

Author:みやうち
いあ!母なる森の黒山羊よ!
いあ!父なる混沌の媒介よ!
北狄の地に眠る、醜く蠢く肉の塊にして、のたうつ太い腕と、滑りにくい靴を好む短い脚、粘液を滴らせる大きな口を持つ。
それは、しわがれた低い声で、呪詛と歓喜を詠うであろう。

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